【第2回】前内閣府副大臣・平将明氏に聞く「国の起業家支援と地方創生」

地方に溢れるビジネスチャンス

安倍政権が成長戦略の柱の1つに掲げる地方創生。人口減少と東京一極集中を是正し、50年後に1億人程度の人口構造を目指す取り組みで、今まさに地方におけるさまざまなプロジェクトが注目を集めています。内閣府で1年間に渡って地方創生、国家戦略特区、クールジャパン戦略などを担当してきた平将明衆議院議員に、地方創生の今後や国家戦略特区について、また起業家はどう地方と関わっていくべきか、話を伺いました。

平将明氏

平 将明(たいら・まさあき)
早稲田大学法学部卒業後、サラリーマンを経て家業の青果仲卸売会社・山邦に入社。1996年に社長に就任し、東京青年会議所理事長も務める。2005年の衆院選に自由民主党から出馬し初当選。現在4期目。経済産業大臣政務官、自民党副幹事長を歴任し、2014年9月から2015年10月まで内閣府副大臣(第2次安倍改造内閣・第3次安倍内閣)を務める。副大臣時代は地方創生、国家戦略特区、クールジャパン戦略など担当した。

規制改革と近未来技術で地方の人手不足に対応していく

ー平議員が携わってきた地方創生について聞かせてください。

:地方の本質的な問題は人口の減少です。そこで、人口減少と地域経済の低迷の負のスパイラルを断ち切るという目的で地方創生が始まりました。ちょうど1年前に地方創生に関する政策をまとめましたが、これからは間違いなく利益が地方から生まれると思いますよ。

日本経済はこれまで工業製品の分野で頑張ってきましたが、地方を支えているのは観光業、一次産業、サービス業の3つです。つまり地方経済を成長させるためには、ここの生産性をどう上げて付加価値を生み出していくかということが重要になってきます。

地方創生というのは、その地域で新たな需要を生み出すということ。その上で、舞台回しは地産地消ですよね。需要を生むためには人が必要ですから、定住人口が減ってしまった分だけ流動人口を増やす必要があります。そうなった時に一番分かりやすいのは観光ですよね。特に海外から人を呼び込むインバウンドがものすごく効く。

例えば先日熊本に5,000人の中国人を乗せた豪華客船が寄港しましたが、その大勢の観光客は現地で1人5万円使ったそうです。ご承知の通り、こういった観光客は各地で急激に増加しています。

次に、一次産業の活性化において行なうべきことは、輸出産業化で新たな需要を生み出すこと、そして六次産業で高付加価値するということ。日本が自信を失っていた20年の間に、アジアは目覚ましい発展を遂げて裕福になりました。日本の調子が悪くなってしまった原因は、観光も一次産業も国内だけのマーケットを見てきたところです。

しかしこれからはそこを見直すことによって、観光はインバウンドで新たな需要を生み出せますし、一次産業は輸出産業化することによって果てしない需要を生み出すことができる。そう考えると、観光も農業も漁業も林業も畜産もまだまだ伸びる余地があります。

ーサービス業に関してはいかがですか?

:サービス業は今後30年間人手不足なので、ここをどう高付加価値化していくかがポイントになってきます。そこで解決策として挙げられるのが、規制改革と近未来技術です。例えば今年に入って、近未来実証特区という国家戦略特区を設けることが決まりました。

近未来実証特区では、ドローンや自動運転、遠隔医療、遠隔教育などの近未来技術を投入することによって、地方の生産性を高めます。例えばコミュニティバスは、レベル4という運転手のいないコミュニティバスを走らせるんです。2017年に準天頂衛星という衛星が4つ上がりますが、米国が運用しているGPSと相互補完を行うことで、GPS単独では受信が難しかった地域での利用や、GPS信号を補正することでより高精度な座標情報を利用できるようになります。

2018年から本格的に運用が開始されますが、準天頂衛星のGPSの精度は非常に高く誤差はわずか数センチなので、これが動き出すと高齢者が運転するよりも自動運転の方が安全ということになる。このようなコミュニティバスを作る計画も持ち上がっています。

また、過疎地であれば、4Kテレビで医師が診察を行い、薬はドローンが持って行くということがすべて可能になります。今は16キロの壁というのがあって、たとえ医師がテレビ画面で診察を行なっても、16キロを超えたエリアでは点数があまり付きません。

また、処方した薬は薬剤師が手渡ししなければならないと薬事法で決められているので、ドローンで運びたくても法律違反になってしまいます。そもそも今はドローンを飛ばすにも規制がかかっていますよね。ですが先日、秋田県仙北市の国有林10km四方をドローン特区に制定し、ここを「ドローン飛ばし放題特区」にしました。

このように、いくつもの規制を先回りして緩和し、特区という目に見える成功例を作っていく。それによって、国民の皆さんの想像が沸きやすくなるのです。

さらにドローン特区では、今後アワード型の研究開発を行なう予定です。アメリカの国防省にはDARPA(国防高等研究計画局)という組織がありますが、DARPAが与えたミッションができる人材を世界中から募り、できた人には賞金を与えるということでイノベーションを起こしています。

日本はこれまでアワード型研究開発をあまり推進してきませんでしたが、これからは積極的にアワード型研究開発をやることによってイノベーションを起こし、どういったサービスが実現できるかを検証する。そしてそれらのサービスを実現するためには今の法律ではすべて規制が邪魔をしてしまうので、先周りして規制緩和しましょうと。今後は、このように規制改革と近未来技術で地方の人手不足に対応していきます。

インバウンドは訪日客数ではなく消費額で考える

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ー先ほど「地方創生においてインバウンドで新たな需要を生み出す」という話が出ましたが、これについても聞かせてください。

:昔は大資本がないと世界中からお客さんを集めることができなかったので、ヒルトンやシェラトンのように世界中にホテルを作り、全世界的なネットワークで予約システムを回すのが有利でしたよね。ところが今は独立系宿泊サイトが台頭し、それによって世界的な予約システムは大幅に価値が目減りしている。

実際東京でも、シャングリ・ラやペニンシュラ、フォーシーズンズなどの世界的チェーンを差し置いて、今最も人気があるのはパレスホテルと言われています。インターネットが出てきて、大資本だから強い、世界中にネットワークがあるから強いということが関係ない時代になってきました。

つまり、ホテルだけでなく地方においても「何をメインに外国のお客さんを呼ぶのか」というところだけしっかりエッジが立っていれば、あとは工夫次第。SNSやYoutubeで火が付けば、いきなりブレイクしてしまうわけですよ。時代が変わり、地元の人が何とも思っていないことでも、世界の人はそれがバリューだと思う。その典型例がニセコのパウダースノーですよね。

オーストラリアを始めとした外国人が大挙して、閑散としていたスキー場に活気が戻った。同じように青森県でも、真冬の風が吹き荒れる雪原をただ歩く地吹雪体験という体験型イベントが流行っています。東京に来るリピーターだって、もう東京タワーやスカイツリーはいいから「朝の混雑した電車に乗りたい」と言っている。そういう時代に入ってきたので、どんな田舎でもビジネスチャンスに溢れているんですよ。

ー確かにその土地でしか味わえないことは貴重ですよね。最近「TRIP」や「Voyagin」など、訪日客相手の体験型サービスが増えてきたと感じます。インバウンドは今後どうなっていくのでしょうか。

:日本だけを見たら人口は減ってきていますが、アジアに目を向ければものすごい勢いでマーケットが拡大し、国民の所得も高くなってきています。

アジアの国々が裕福になってきて、本当に価値のあるものを提供しようと考えた時、例えば観光だったら食や治安、ホスピタリティといったものは、国に厚みがないとできないんですね。じゃあアジア全体で見た時に、そういう本当に価値のあるものを提供できるトップランナーはどこかと言うと、おそらく日本にということになるでしょう。

EU諸国は、農業はオランダ、林業はオーストリア、デザインはイタリア、観光と食はフランス、漁業はノルウェーというように役割分担をしていますが、アジアにおいて日本はフランスにもなれるし、イタリアにもなれる。しかもEUよりアジアのマーケットの方が遥かに大きく、成長余力も遥かに大きい。ということは、今まで日本は自動車の輸出で頑張って稼いできましたが、自動車も頑張りつつさらに観光でも利益を得ることが可能になってくるわけです。

先日「訪日外国人旅行者2,000万人」という目標はやめるべきだと指示しました。本当に重要なことは、訪日客数を増やすことではなく、実際に日本を訪れた外国人にいかに消費してもらうかということ。忙しくて儲からないというのは最悪ですからね。これからは労働人口が増えないので、高付加価値化するしかないんですよ。

人数ばかりを追うのはやめて、目標を消費額で考える。今ダブルで走らせていますが、そういうことをやっていけば観光はものすごく儲かりますよね。おそらく2,000万人なんていう数字は来年には達成するので、国は観光周りのインフラを急ピッチで整える必要があります。

ー地方創生と言えば、農業に関してはいかがでしょうか。

:農業に関しては、輸出産業化ができますよね。私は政治家になる前は八百屋として大田市場の卸しをやっていたので、世界中どこを探しても日本ほど美味しい果物が揃っている国はないということを実感しています。ニュージーランドのキウイとフロリダのグレープフルーツ、それ以外にいくつかあるぐらいで、本当に日本には美味しい果物が溢れている。

これはまず高く売れます。あとは米も売れると思うんですよね。今中国の人たちが日本で何を爆買いしているかというと、10万円の炊飯器を大量に買って帰っている。そこで10万円の炊飯器に相応しい米は何かと考えると、やはり日本の米以外ないですよね。10万円の炊飯器を平気で買っていく彼らにとって、米が1袋3,000円でも5,000円でも関係ない。これは儲かると思いますよ。同じように、林業や水産、畜産においてもあらゆる成長戦略が描けているので、こちらも楽しみですね。

地域が気付いていない価値をリデザインして新たな需要を生み出していく

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ー地方における起業は今後どうなっていくのでしょうか。

:地方には今ビジネスチャンスが溢れていて、フロンティアは地方にある。例えば今は、テクノロジーの発達によって会議をやるにしても場所的制約はあまりないですよね。だから何も六本木や丸の内で起業することはないんですよ。

今後は福島に行って農業で起業したり、岡山で林業を始めるような地方発の起業家が増えて、裕福な農家や牧場がどんどん出てくる。日本はそういう風になっていくと思いますよ。それから、地方だからと言ってなにも自ら農業をやる必要はありません。

地方はITなどのテクノロジーやマーケティング、経営力、グローバル展開においてはまだまだ弱いので、そこを強化するための起業だっていいし、農業周辺の起業だっていい。地方で起業がカッコいいし儲かる。そういう時代になってきていると思います。

ー地方の起業で成功した例で印象的なものがあれば教えてください。

:「気仙沼ニッティング」という震災支援のプロジェクトをご存知ですか?御手洗瑞子さんというマッキンゼー出身の女性が、東日本大震災の後に「何か私にできることはないか」ということで気仙沼に行ったんです。気仙沼は漁業の街なので、普通の感覚の持ち主であればおそらく「魚を加工して気の利いたデザインのパッケージを作ってネットで売る」というような誰でも思い付くようなビジネスしかしないでしょう。

ところが彼女は、気仙沼の街を回りながら、漁師が着るセーターを奥さんが編んでいるということを知り、それをビジネスに展開したんですよ。手編みができる漁師の奥様方が大勢いるというところに着目して、カッコいいデザイナーを連れて来て、漁師の奥さんたちが手編みをした1着15万円超えのオーダーメイドのセーターを売り出した。

それが今注文殺到で買えないんですよ。これって新たな需要ですよね。それも外から入った人間が、気仙沼の価値やリソースを見つけてビジネスに結びつける。地域が気付いていない価値をリデザインして、世界に発信して新たな需要を生み出していくという起業がクールですよね。

ー何がビジネスになるか分からない。良い事例ですね。では最後に、起業家に向けてメッセージをお願いします。

:日本という国はいい国で、仮に破産しても飢え死にするようなことはありません。生活保護もあるし破産の仕組みもある。ですから、法令遵守さえ忘れなければ挑戦しやすい国なんですよ。私も以前はいろいろ会社をやっていて、売上をバンバン増やしていた時期もありましたが、ある日突然取引銀行が2つとも破綻してしまった。原因は、1997年に起きた山一証券の経営破綻に端を発した金融危機です。

それで相当大変な思いをしましたけど、その時に「頭で考えても何も経験値は上がらない。とにかくやってみないと分からない」と痛感しました。創業時に作った事業計画通りに成功した人なんていないんだから、とりあえずやってみる。そこで一番重要なのは、どんなに追い詰められてもズルはしないということ。そうすれば何度でも挑戦できますし、うまくいかなくてもそれがまたいい経験になる。それはそれで学ぶことは多いと思いますよ。
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(編集:創業手帳編集部)
BB-WAVE掲載日:2016年1月13日