【第1回】前内閣府副大臣・平将明氏に聞く「国の起業家支援と地方創生」

経営者から副大臣になった平将明氏が改革した起業家に優しい日本の起業家支援

起業のタイミングや起業後の資金調達において、国が行なう支援や政策を利用する起業家は多いでしょう。日本では、今どのような起業支援が行なわれているのか。1年間に渡って内閣府で中小企業・小規模事業者政策を推進し、自らも経営者としての経歴をお持ちの平将明衆議院議員に、改めて国が行なっている起業支援について話を伺いました。(全2回)

平将明氏

平 将明(たいら・まさあき)
早稲田大学法学部卒業後、サラリーマンを経て家業の青果仲卸売会社・山邦に入社。1996年に社長に就任し、東京青年会議所理事長も務める。2005年の衆院選に自由民主党から出馬し初当選。現在4期目。経済産業大臣政務官、自民党副幹事長を歴任し、2014年9月から2015年10月まで内閣府副大臣(第2次安倍改造内閣・第3次安倍内閣)を務める。副大臣時代は地方創生、国家戦略特区、クールジャパン戦略など担当した。

ITと起業を応援するストックオプション型の補助金で起業を支援していく

ー平議員はこれまで中小企業・小規模事業者政策を推進してきましたが、起業家を取り巻く現状をどう捉えていらっしゃいますか?

:私は昨年、成長戦略の一環としてスタートアップとベンチャーの政策をまとめましたが、日本はここ何年かで急激に起業しやすくなってきていると感じています。

以前に比べて起業家のためのサービスは整ってきましたし、資金も調達しやすくなってきている。起業家と伴走してくれる人たちも増えてきたので、環境は劇的に良くなってきているのではないでしょうか。

ー安倍政権は日本再生ビジョンの1つに「起業大国NO.1」を掲げています。具体的にどのような起業支援を行なっているのでしょうか。

:今最も起業しやすいのはITの分野ですが、ITにおける起業支援としては、経済産業省のIPA(情報処理推進機構)という外郭団体が2000年から「未踏プロジェクト」という事業を行ってきました。

ITを駆使してイノベーションを創出できる人材を募り、独創的なアイディアや技術を持った方には国からの委託金で開発を行なってもらうという国家事業です。

この未踏プロジェクトは、慶應義塾大学の夏野剛さんや東京大学の竹内郁雄さんにプロジェクトマネージャーとして目利き役になっていただいていますが、実はこれまでそこから先の起業に結びつける方策がなかったんです。そのため、Googleやヤフー、Facebookなどの企業に優秀な人材を取られてしまっていた。

そこで今構想しているのが、ITと起業を応援するスタートアップファンドを作るということです。未踏プロジェクトに応募するような優秀な人材を集めて補助金を元に起業してもらい、未踏プロジェクトと同じように外部の目利き役に助言をお願いします。

ただ1つだけ従来の仕組みと違うところは、将来事業がうまくいったら補助金を返金するストックオプション型にするということ。ITと起業とスタートアップの資金をすべて網羅した補助金で、これは近いうちに形になるでしょう。

ー他に行なっている起業支援について教えてください。

:日本は雇用の問題が難しく、人を雇ってうまくいかなかったからといってすぐクビにするわけにはいきませんよね。そこで福岡市に無料で雇用相談ができる「雇用労働相談センター」を作りました。それも役所の中ではなく、TSUTAYAの中にね。

今まで雇用は裁判をしてみないと分からない世界だったのが、ここでは常駐する弁護士が雇用問題について事前に教えてくれて、しかもかなり突っ込んだアドバイスをしてくれる。福岡市は2014年5月に「グローバル創業・雇用創出特区」に指定され、2014年10月には起業に関する相談ができる「福岡市スタートアップカフェ」をオープンさせています。

雇用労働相談センターはこの施設内にあり、スタートアップカフェでは他にもセミナーや交流会、先輩起業家による相談会など、さまざまなイベントを行っています。

さらに、今年の4月には東京・赤坂のジェトロ本部内に会社設立の迅速化を目的とした「東京開業ワンストップセンター」を開設しました。これまで公証人は役場の外で業務を行うことができませんでしたが、法律を変えて公証人が出張できる特区を作ったんです。

つまり、起業に関わるすべての役所がこの「東京開業ワンストップセンター」に揃ったわけです。しかもここがいいのは、すべて英語対応可能にしたということ。

バイリンガルの相談員が東京で事業展開を目指す外国企業のビジネスマッチングや生活面の相談に対応する「ビジネスコンシェルジュ東京」という窓口を設け、日本で起業したい外国人は起業のアドバイスをワンストップでもらえます。さらに、日本で起業したい人を滞在しやすくするため、ビザの規制緩和も行いました。

中小企業用ポータルサイト「ミラサポ」と「認定支援機関」の活用

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ー起業したばかりの会社に限らず、中小企業に対する支援でここ数年で始まったものはありますか?

:ご存知の方もいらっしゃると思いますが、2013年に中小企業庁が「ミラサポ」という中小企業用のポータルサイトを作りました。こういった類いのサイトは、今まで必要な情報はタイムラインに出てそのうち消えてしまっていましたが、ミラサポでは利用者が求める項目ごとに政策にたどり着けるようにしています。

専門人材が欲しいのか、資金繰りの相談をしたいのか、商品開発をしたいのか、人によって調べたいことは違いますからね。

さらに、サービスを受ける側は国の政策だろうが東京都の政策だろうが使えるものは全部使いたいので、すべての行政の情報を一覧できるようにしました。例えばWebサイト上で会社の所在地を入れると、大田区の会社であれば国、東京都、大田区の政策を同時に見ることができます。これは何がいいかと言うと、縦で見られるということは横でも見られるわけですよ。

つまり、どこの県のどこの市が一番起業しやすい政策があるかということが一目で分かる。気の利いた起業家の方であれば、起業する場所を変えることだってできるわけです。

ー今のお話は起業家目線で違和感がないですね。

:私は政治家になる前は自分で会社をやっていましたし、いくつか会社も作ったので起業家の気持ちは分かります。役所の人間が一番致命的なのは、資金繰りの感覚がないということ。企業というのは黒字や赤字も大事ですが、資金が詰まるとそこですべてが終わってしまいますよね。

そのため、資金がいつまで持つかという時間軸で手を打っていきます。この月末をしのげるか、次の10日まで持つか、そういうスピード感で生きていますよね。ところが役人というのは、決まった日に確実に給料が振り込まれる世界で生きているため、時間軸の取り方が年度ごとという何とも大きなスパンになってくる。

私は中小企業政策を考える上で一番大事なのは、資金繰りだと思っています。一方で、我々が使えるのは補助金と言っても原資は税金なので、野放図には出せませんよね。でも役人に目利きができるのかと言われたらそれは難しい。

そこで今まで中小企業政策は何をやってきたかというと、バブル崩壊やサブプライムローン問題など、金融機関が機能しない時にセーフティネット貸付や信用保証で金融をつないでいきました。そうすると、デフォルトのところだけ税金で見てあげれば、それを上回る貸金を供給できるわけですよね。極端な話、5%をデフォルトとすると20倍のお金を供給できる。

そういった政策を行なってきましたが、そろそろ金融危機の影響もなくなってきたからもう少し前向きなことをやろうということで、中小企業に関しては2012年に「経営革新等支援機関(認定支援機関)」というものを作りました。

これは国が認定する公的な支援機関で、金融機関や税理士、公認会計士、弁護士が1つのチームとなり、中小企業に対して経営改善の計画を作り、専門性の高い支援事業を行っています。

私は2012年末から約1年間経済産業大臣政務官をやっていましたが、当時いろいろと手掛けたことによって随分と合理的なシステムになったのではないでしょうか。補助金の申請書類は無駄を省いて3分の1ほどに減らし、誰にでも分かりやすくしました。例えば副大臣や政務官のところには、政策内容を簡潔にまとめたポンチ絵という1枚紙が役所から届けられます。

ところが中小企業に配られている政策のパンフレットには、当然ポンチ絵なんてどこにも付いていませんし、中には私が読んでも分からないようなものもある。しまいには「この政策は何を目指していてどういう人が使えるのか」ということが最後に書いてあったりするんですよ。

そのため、分かりやすい説明を付けさせて、資金繰りの連絡先は一番前に持ってこさせました。例えば「ものづくり補助金」は、審査に通ってから入金まで1年かかるんですね。

その間を公的融資でつなげるということがいまいち分かりづらかった。なので、募集要項の分かりやすいところに書かなきゃダメだろうということで、パンフレットの一番見やすいところに「資金繰りに関してはこのような制度があるのでご活用ください」と入れさせましたよ。中小企業にとって、最大の感心事はその間の資金をどうつなぐかということですからね。

ー最後に、起業支援に関して今後取り組んでいきたいことを聞かせてください。

:会社の規則なので法律でどうこうできる問題ではありませんが、大企業の兼業禁止規定を緩和していきたいと思っています。例えばグリーの田中(良和)さんなんかは、楽天在職中に趣味の一環として週末にゲーム開発をやっていましたよね。

そういう話を聞くと、やはり兼業禁止を緩めてそういった方たちがいろいろなチャレンジをして起業する形が一番合理的じゃないかと。ですから、それを総理あたりから経団連や商工会議所に要請してもらう。これは以前からずっと言っていることですが、実現すればまた違うパターンの起業が増えていくのではないでしょうか。

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(編集:創業手帳編集部)
BB-WAVE掲載日:2015年12月22日