【第一回】「テプラ」「ポメラ」などヒット商品連発のセオリーとは?キングジム宮本社長独占インタビュー

キングジム流のユニークな商品開発

オフィスで働いたことがあれば、「テプラ」を知っている人は多いはず。表示用のラベルが手元で簡単に作れるオフィス文具ですが、もはやオンリーワン商品の感があります。「テプラ」をヒットさせたのは文具事務用品メーカーのキングジム。「テプラ」の他にも最近では、文章入力に特化した「ポメラ」も大ヒットしました。「テプラ」「ポメラ」などヒット商品を連発しているキングジム宮本社長に独占インタビューし、「ユーザーが本当に欲しい物」を開発するセオリーを伺いました。

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宮本彰(みやもと あきら)
1954年生、東京生まれ。慶応義塾大学卒業後、祖父が創業した文具メーカー・キングジムに入社。84年に常務取締役総合企画室長、86年に専務取締役に就任。85年に、それまで自社で扱っていなかった電子文具の開発を目指す「Eプロジェクト」を立ち上げ88年に発売した「テプラ」は大ヒット商品となった。92年に代表取締役社長に就任。その後も「ポメラ」「ショットノート」をはじめ、独創的なアイディア商品を次々とヒットさせ、脚光を浴び続けている。

可能性があればチャレンジする。10個に1個当たればいい

ーユニークな商品を社内から出すために社長が日々心がけていらっしゃる事を教えてください。

宮本:創業当初から「世の中にないものを作ろう」「人の物まねをしていたら面白みがない」という理念が培われてきたと思います。商品開発については、基本的に好きなようにやらせていて、
あまりルールが無いというのがルールです。

そのDNAがずっと生きてきているので、私が色々指示を出す以前に社員から次々と斬新なアイデアが出てきます。

問題は、それらのアイデアをどれだけ採用するかです。

その商品が売れるか売れないかは、実際に出してみなくては分からないので、開発部門の審査をクリアして、最終的に開発会議まで上がってきた商品についてはだいたいGOサインを出します。
発売してみて売れ行きが悪かったらすぐやめるという撤退の判断も早いです。電子文具に代表される新規概念商品は、10個に1個ぐらい当たれば良いという感覚で進めています。

明らかにダメなものは没にしますが、もしかしたらヒットするかもしれないという可能性を感じれば、GOです。そのサクセスストーリーを信じて出してみるという感じです。

ー在庫を抱えるリスクがあると思うのですが、どのような対策を取られているのですか?

宮本:10個に1個の割合で成功するという事は、9個は失敗するわけですから、本音を言えばだいたい失敗なのですよ(笑)。失敗することが前提なので、それを覚悟してなるべく少ない数量でつくります。

ファイルなどのすでに市場のある商品は、万が一売れなくても例えば価格を下げれば売れるとか、色々なやり方をして何とかさばけます。ところが、我々が積極的に取り組んでいる電子文具に代表される新規概念商品は、もともと市場がありません。極端に言うと、半値にしても3分の1にしても10分の1にしても売れないかもしれないのです。だから、それなりのリスクを覚悟して取り組んでいます。

ー経営者が相当な胆力がないとなかなかできないですよね。

宮本:そうですね。悲しいですが、売れないものはどうしようもないですからね。

10個のうちの9個はそれなりに損をするわけです。ところが、そういう新規概念の商品というのは10個に1個でも当たればとても大きな利益を生むのです。まず競合がいないから利益も十分取れますし、新規商品ほど大ヒット商品になります。9個の損を取り返してなお、おつりがくる…そのぐらい当たるということです。

当社の場合、ファイルなどの定番商品による安定基盤があります。この安定基盤があるからこそ色々なことにチャレンジできているのです。チャレンジと安定基盤のバランスを考えないと経営が危なっかしいですからね。

ー商品開発する方々がユニークな方が多いと伺っているのですが、どのような採用、育成をされているのですか?

宮本:特別な人を採用しているわけではないのですが、採用ではどちらかというと全科目まんべんなく80点を取れる人よりも非常に個性があって特技を持っている人を採用するようにしています。特技がハマるといい仕事をすると思っているので…

利益を生み出すニッチな商品

kingjim2ニッチ商品:デジタルメモ「ポメラ」
文章入力に特化したユニークな文具。
実際に編集部で使ってみましたが、本当に文章入力しか機能がなかったです。携帯にちょうど良い大きさで、キーボードを打つ感触が良く、ほかのことができないので、文章を書くことだけに集中できました。

ー「心地よいニッチ商品」についてお聞きしたいです

宮本:電子文具の場合の話ですが、大手企業がやってこない、隙間にこそチャンスがあると思います。「ポメラ」なんて一番いい例なのですが、どこも競合が出てこないから、十分利益が取れる。大手企業ではたいした事のない事業規模でも、当社にとっては非常においしい。そういうのが居心地のよい隙間(ニッチ)なのです。

ーチャレンジングな商品を売っていく時の特殊な仕掛け等はあるのですか?

宮本:販促というよりも、話題作りがポイントですね。
「こういう商品が欲しい」と思う人に確実に情報を届けるのが一番大切です。

「ポメラ」の場合、開発会議で絶賛したのは社外取締役の大学教授でした。彼は、ノートパソコンを持ち歩いていましたが、パソコンに搭載されている色々な機能は使わずに、文字を書くためだけに使っていました。

重たいノートパソコンは起動にも時間がかかり、余計な労力を費やしていた。だから、パソコンよりも軽く、起動時間も短い「ポメラ」という文章を書くためだけに特化した商品がとても便利に感じたのです。

パソコンが全盛の現代で、文章を書くためだけの商品に共感するのは、限られた人たちですよね。このように限られた人たちに、情報を確実に届けるというのが非常に難しいのです。

TVCMを流す方法もありますが、その分コストもかかる。最近つくづくありがたいと思うのはネットの広報力です。

ネットはユーザーが自分で情報を取捨選択して取りに行くので、TVCMのように好むと好まざるとに関わらずどんどん情報が流れてくるのとは違います。だから、マニアックな人がマニアックな情報を自分で手に入れに来る。そのネット情報をどのように活用するのかが一番ポイントになるのです。

もちろん、ネットメディアに取り上げてもらうのが一番ですが、自社で運営しているツイッターやフェイスブックも活用してキングジムファンを作っていく、そして、キングジムファンたちが情報を得て行動に移す…という流れだと思います。
ネットにいかに上手に取り上げてもらえるかが電子文具を売るときの肝じゃないかと思っています。

ーツイッターやフェイスブックとった地道なところから攻めて行かれている印象がありますが。

宮本:そうですね(笑)地道に思われるかもしれないですが、本当に効果絶大ですよ!
ネットは、情報が情報を呼ぶじゃないですか。どんどんリツイートされて広まっていくので、素晴らしい口コミ情報になるのです。

ー情報に敏感な人が利用してみて、一般層に徐々に広まっていくという感じですか。

宮本:順番ではそうですね。マニアックな人が一番初めに利用し始めて…だけど、我が社の電子文具で消費者の裾野まで行くような商品はめったにないですからね…山の上の方だけなので。

ー一億二千万人で一割取れれば十分という感覚ですか?

宮本:十分などころか、それは最大の目標ですね。

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キングジム本社で宮本社長のインタビュー。趣味の釣りで日焼けした肌と楽しそうに商品のことを話す姿からもヒット連発の自由な社風が垣間見える。

(取材協力:株式会社キングジム/宮本社長
(編集:創業手帳編集部)
BB-WAVE掲載日:2015年11月04日