【第二回】スタバ元CEO岩田松雄「アルバイトもやる気になる」リーダー論

岩田松雄さん

社長の時間を充実した時間にするためには

岩田:私は、企業にとって一番大切な資源は、お金や設備ではなく、「社長の時間」だと思っています。その社長の時間は、役員人事や新規事業や、お金を生み出すような事など、社長にしかできないような仕事に費やすべきです。

リーダーは皆から判断を求められることがよくあります。
私はそのような場合、できるだけ皆から意見を聞くようにしています。これは、私が答えを分かっていても、「あなたはどうしたらいいと思いますか?」と聞くことで、皆が自分で考える癖をつけさせるためです。

一般的にワンマンな強いリーダーほど、部下の主体性を損なってしまう。部下は怒られるのが嫌だからとりあえず、自分は考えないで、なんでもかんでも「どうしましょうか?」と聞きにきてしまうのです。

大切なのは現場レベルで判断できることは現場で判断してもらうことです。そのために「君はどう思うか?」と質問を常に投げ返すのです。そうすることで日常の業務が判断力を高めるケーススタディーになってくるわけです。

もちろん、会社の価値観に合わない事や、お客様を大事にしないような答えが帰ってきた場合には、そこは違うよとしっかり教える必要があります。なぜそれが間違っているのかしっかり指導しなければなりません。

皆が納得するように評価する

-部下の評価に関して心がけた方がよいと思われることはありますか?

岩田:実績(数字)を上げた人に対しては、ボーナス(金銭)で報いる。昇格させるかは、その人のリーダーシップや人間性=徳によって判断すべきだと思います。性格が悪いけれども成果が挙げられる人っているじゃないですか…(笑)でもそれって評価してあげなければいけないと思うんです。だから実績に応じたボーナスを支給する。

でもその人を偉くするかどうかは全然違う話です。一般的には数字は一番わかりやすいから数字が出たら偉くするじゃないですか。説明責任がいらないからです。でも数字が劣っている人を偉くするときには、当然説明をしなくてはならない。

なんで?こっちの人は数字が悪いのに…となる。その時にちゃんと彼は会社の理念をしっかり理解し行動が伴っているとか、部下をちゃんと育ててくれるとか、でもあなたは数字を上げたかもしれないけれども、お客さんを怒らせたとか、部下が皆泣いているとか、そういう事を説明しないと納得させることはできません。

すべて社員を社長の意識にする

-人の上に立つというポジションはいろいろあると思いますが、社長とそれ以外の違いは何ですか?

岩田:よく言われている話で、社長と副社長の違いよりも、副社長と平社員の差の方が大きいと思います。社長は365日、24時間仕事の事を考えています。寝ていてもふっと思い出したり(笑)…それぐらい他の役職者とはコミットメントが違います。
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だから、皆がそれぐらい仕事にコミットメントしてくれたら絶対に会社の業績は良くなります。じゃあ、皆にどうやったら社長と同じ気持ちになってもらえるかという事を考えればいいですね。会社に出資してもらって、株を持ってもらうとかという方法もありますけれども…

よく考えないといけないことは、社員全員に自分と同じような気持ちになって働いてもらえるようにすることです。言われたことだけをやるのではなく、自分の会社のように、何をすればよいかと真剣に考えてくれるかどうか。それを仕組みやコミュニケーションによって、手を替え、品を替え、考えることが必要です。そのために大幅に権限委譲したり、業績賞与なども検討すべきです。

それは社員に限らずアルバイトの人もそうだと思います。アルバイトでも派遣でも、ちゃんと仕事のやる意味、意義を教え理解してもらい、仕事を頼むと全然アウトプットが違ってくるといます。そして評価をちゃんと報酬に連動させる。いかに社長と同じような気持ちを皆で共有化するかというところが大きいと思いますね。

-単にやらされている人と、社長と同じ気持ちの人たちが社員全員だと、競争力が違ってくるということですね。

岩田:そうですね。全然違ってくると思います。社長の時間は限られていて、全ての事に首をつっこむのは無理です。常にそれぞれがその場その場での判断を求められているわけです。その時に社長と思いを共有していれば、マニュアルがなくたって、自分で判断して動けるわけですよ。分厚いマニュアルは誰も読まないですから、それよりも、会社の<理念>『ミッション』をしっかり共有できていれば、何をすべきか、何をすべきではないかを判断できるようになるのです。

もちろん、会社全体の関わるような大きな決断の時には、きちんと社長に相談してもらった方がいいですが、日々の判断は出来るだけ現場のみんなに任せておくのです。

-よく聞く話ですが、スターバックスにはマニュアルがないと伺っているのですが。

岩田:コーヒーの淹れ方、掃除の仕方…みたいなオペレーションマニュアルは決まっています。しかし、いわゆるサービスマニュアルは無くて、「JUST SAY YES!」だけなんです。「道徳、倫理に反しない限りお客様の望むことを全てやってください」ということです。

-そのような場合、<会社の理念>が浸透して、社長の信念を共有していないと難しいですよね。

岩田:そうですね。まあ、どこの会社にもそれなりの<理念(ミッション)>はあると思います。スターバックスの理念が特別素晴らしいという事ではなくて、それをトップから社員一人ひとりまで、本気になって実現しようとしているかどうかだと思います。

<理念(ミッション)>をしっかり持って社員に浸透させていれば、その場で色々判断ができる。

つまり社長と同じような気持ちになって仕事をしてもらえます。社長の分身をいかに作っていくかという事が経営にとってとても大切な事です。

岩田松雄さん

(取材協力:飛鳥新社)
(編集:創業手帳編集部)

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