革新的なモノを生み出すフロー経営とは「AIBOを作った男」天外伺朗氏インタビュー

フロー体験は誰もが経験しているはず

フロー体験は誰もが経験しているはず

ー創業者は、どのように「フロー」を活かせば良いでしょうか?

天外 :経営者というのはさまざまな葛藤が強く、特に創業者はその傾向が強いですね。創業は大変な努力が要求されるので、それを乗り切るには経営の才能以外にエネルギーが強くないとできません。つまり多くの創業者は、葛藤のエネルギーを使って創業してくる。ボクシングでよくハングリー精神と言いますが、あれがまさに葛藤のエネルギーです。このエネルギーに満ちている時は管理型経営ができますが、前出の「燃える集団」のように、社員が自由にやれるフロー経営はできません。創業者自身が先頭に立っている時は生き甲斐を感じてうまくいきますが、一方で社員は疲弊していく。ハッキリ言ってこれでは会社が長続きしません。フロー経営は、創業者の葛藤のエネルギーがある程度おとなしくなっている状態で実現します。


ーでは、どうすれば経営者は葛藤のエネルギーをコントロール出来るのでしょうか?

天外 :こうしようと思ってもそう簡単には変われませんから、例えば私の天外塾では瞑想を使ったり、いろいろな方法論でやっています。私が以前出した『問題解決のための瞑想法-内なるモンスターを鎮めて人生を変える』という本には、いろいろな瞑想法が書いてあります。


ー天外さんがAIBOを開発されている時はフロー状態でしたか?

天外 :そうですね。そうでないとあんな奇跡を起こすようなプロジェクトは成功できなかったと思います。一方で、奇跡が起こるほどのフローではない、もっと浅いフローもあるんですね。チクセントミハイ教授はマイクロ・フローという言い方をしていますが、お茶を飲んでいる時でもフロー状態入ることはあります。例えば急に思い立って旅行に行こうとなった時、何だかバタバタとうまくいくことがありますよね。フロー経営という言葉を知らなくても、皆さんきっと体験していますよ。

フロー経営に関しては、「人間性経営学シリーズ」という著書を6冊出しています。その6冊とは別に『名経営者に育った平凡な主婦の物語』という漫画を出しましたが、これを見ていただくとフロー経営がよく分かると思います。


ー『名経営者に育った平凡な主婦の物語』について、どういった内容なのか少し教えていただけますか?

天外 :主婦の方が旦那に言われてチェーンのコーヒー店を経営していましたが、滅茶苦茶だった経営がフロー経営を取り入れたことによってあっと言う間にうまくいった。そんな実話を漫画にしました。これは先ほどの話で言うと、主婦なので葛藤が少ない分簡単にフロー経営ができたということです。もう1つは、その方が学生時代から熱気球にのめり込んでいたので、仕事以外のところでフロー体験をしていたために簡単にフロー経営ができてしまった。でも普通の経営者はそうはいかないとは思いますが。


ー経営者が社員にやる気を促すにはどうしたら良いのでしょうか。

天外 :社長は社員に仕事を任せてもうまくいかないのではないかという不安を感じています。ところがその不安は意識の表面にある不安であって、意識に昇らない奥底には別の不安が潜んでいます。それは、もし社員に仕事を任せてうまくいってしまうと、自分の存在価値がなくなるのではないか、という不安です。つまり、表面的な不安とは正反対に、任せてうまくいってしまったら大変だ、という不安が無意識レベルに潜んでいます。それに気が付くことが大切なポイントですよね。でもみんなそこに気が付かない。特に葛藤の強い人は難しいですね。心の中でコントロール願望を持ったまま部下に仕事を任せても、絶対にうまくいきません。

これはコーチングも同じで、社長が円滑にコミュニケーションを取ろうとコーチングを勉強しても、社員に対してコーチングをやるとうまくいかない。1つは上下関係があるのが原因で、もう1つはコントロール願望がある状態でやってしまうからです。それと同じで、コントロール願望を秘めたまま仕事を任せてもうまくいくわけがないということです。例えば私の天外塾では深層心理的なワークがたくさんあって、それらを経てフロー経営ができるように指導しています。

編集部まとめ
  • ■ 日本的経営から欧米式経営に変わったがその過程で失われてしまったものもある。
  • ■ 集団が自発的に動く「流れ(=フロー)に乗っている状態」は誰しも経験がある方が多いはず。
  • ■ 「フロー経営」では経営者のコントロール願望を制御して社員の自発的な意欲を引き出す事を重視。

(創業手帳編集部)
BB-WAVE掲載日:2015年06月03日