革新的なモノを生み出すフロー経営とは「AIBOを作った男」天外伺朗氏インタビュー

フロー理論をサッカーに取り入れた岡田監督

フロー理論をサッカーに取り入れた岡田監督

ーそこが始まりだったんですね。

天外 :その後出版した『運命の法則』が、日本経営合理化協会の目に止まり「経営塾をやって欲しい」と声が掛かりました。当時はずっと技術畑にいて経営には興味がなかったのですが、よく聞いたら、声を掛けてくれた人が中村天風(日本初のヨーガ行者、思想家)を発掘した人で、中村天風がまったく知られていなかった頃に彼の講演テープを集めて本にして出版していた方だったんです。それを聞いて、誘いに乗ることに決めました。この本によって運が開けたわけです。


ーその後の展開は?

天外 :その流れで天外塾という経営塾を始めました。それが評判を呼んで、ある時サッカーの岡田武史監督が来たんです。岡田監督は元々きっちり指示命令をするタイプの指導者で、管理型マネジメントによってうまくいっていた。J1で優勝する程度だったらこれでいけるだろうと思っていたようですが、先を見据えて新たなマネジメント手法を一生懸命探っていたようです。管理型の限界を感じていたんですね。選手たちが生き生きと自主的に動くマネジメントはないだろうかと。その時に、上から指示命令をしない天外塾の考えに感銘を受け、彼は熱心に全6回の講義すべてに出てくれました。


ー岡田さんはどのようなところに共感したのでしょうか。

天外 :初回の講義で僕がスポーツの話をしたのです。人間の大脳には新皮質という部分がありますが、この新皮質でスポーツをやろうとすると、計算時間が遅すぎるためボールが通り過ぎても計算が終わらない。運動は古い脳がやるものなので、そこに新しい脳が出てくると全部がおかしくなってしまうんですね。脳科学的に見ると、運動している時にこの脳の新しい部分がごちゃごちゃ言ってくるのを何とかシャットダウンしないといけない。

つまり、新皮質が優性になっているとフローに入らないということです。岡田さんはその点に共感されたようで、その後日本代表監督になったと同時に早速フロー経営を実践されました。だけど最初のうちはそのやり方がものすごく叩かれまして、僕も一緒に叩かれましたよ。

ただ岡田さんはものすごく工夫をする人で、僕の考えをもとに「指示命令をしないつぶやき作戦」ということを実践していました。例えばシンプルにボールをつなぐというのがチームのコンセプトで、監督はドリブルについて指示を出したい。ところが「ドリブルしろ」なんていう指示を出したら、選手側の脳の新皮質が働いて動きが0.2秒遅れてしまう。そこで岡田さんは、試合のビデオを観ている時に誰かが良いドリブルをしていたら「良いドリブルだ」とつぶやいたわけです。

そういったことをものすごくいろいろ工夫した結果、2010年の南アフリカのW杯では見事16強に入りました。当時のチームはレベルがあまり高くなかったにも関わらず、選手みんながフロー状態に入ったことによって、自分たちより格上のチームに勝って16強になったわけです。