竹中平蔵氏が語る日本の創業チャンス

起業はモヤモヤとしたところから始めてもいい

起業はモヤモヤとしたところから始めてもいい

ーところで、竹中さんはよく「日本は起業する会社は少ないが同時に廃業も少ない」とおっしゃっていますよね。それは起業家にとってどのような状況なのでしょうか。

竹中:廃業が少ないというのは、利益率が低く出来の悪い社長がいる会社がゾンビのように生き残っているということです。日本はそれを淘汰するようなコーポレートガバナンスのメカニズムが非常に弱いんです。ちゃんとした社外取締役がいたら、社長に対して「間違っている」と言いますよね。ところが日本は社長の弟分みたいなのが取締役だから、そう言えないわけですよ。だからダメな社長、つまりダメな会社が生き残ってしまう。

私が産業競争力会議で「会社法を改正して独立した社外取締役の数を増やす」とコーポレートガバナンスの強化を提言すると、堂々と財界人が反論します。私はね、やはり起業家にはこういう人たちを蹴散らして欲しい。そういうものを打ち破って「俺みたいになってみろ」と次の世代に伝えられるような人が若い人から出てきて欲しいですね。

ーやはり若い人というのはポイントですか?

竹中:フェイスの平澤社長が言っていましたが、彼はいろいろと講演を頼まれるけれど、大人に対しては無駄だからしないそうですよ。自分は26歳で起業したけれど今は失うものが多くて怖くてできない、若い人は失うものがないから起業できると。だから若い人には講演をするそうです。

もう1つ起業した人の考えで面白いなと思ったのが、クックパッドを興した佐野陽光さん。彼に「何でクックパッドの事業内容はレシピサイトだったのか」と尋ねたら「笑いがある社会にしたいと思ったから」って言うんですよ。笑いの原点は家庭の食卓で、それに対してレシピを提供して社会に貢献したいと思った。……というのは表向きで、そんなことを考えるのは相当後なんですよ。最初は無我夢中で、いろいろやっていくうちに自分がやっていることの意義が分かってきた。起業なんて最初からそんなにかカッコいいもんではありませんと。これは非常に若者に聞かせたい意見だと思いました。

ーそういうスタンスで起業していいものなんですね。

竹中:そうですよ。私が友人付き合いしている歌手の谷村新司さんだって、今は素晴らしい曲を作って歌を届けることが使命だと思っているそうですが、「歌を始めたのは音楽でモテたかった」と明示的に言っています。それでいいと思うんですよ。最初からそんなに格好良くはいかないですよね。最初はモヤモヤっとしていて何かやりたいというだけでもいい。でも初心を忘れないで突き詰めていくことです。

孫正義さんが言っておられましたが、「お金儲けをしたいと思って始めた人はやっぱり失敗している」と。何かをやりたい、でもそれが何かは最初からは分からない。けれどそういう人は成功すると。孫さんはその何となくというのがいろいろやっていくうちに湧いてきて、ITで世の中に貢献できるんじゃないかと思っていたわけですよね。