松岡修造さんに聞く、起業家に必要な「伝える力」を伸ばすコツ

人間力を鍛える一番の方法は失敗すること

ーでは、人の上に立つ者にとって重要なものは何だと思いますか?

松岡:この人に付いていきたいと思うポイントは、やはりその人自身の魅力です。この人だったら一緒に賭けていきたいと思える人。それには人間力が必要です。僕が捉える理想のリーダー像は、人間力がある人で、この人のためなら働けると思える人。その人の持っている考え方や具体論が明確であればあるほどついてきてくれると思います。

ー人間力という話が出ましたが、強いて言うと人間力を鍛えるには?

松岡:一番は失敗することだと思います。僕は『プロフェッショナル』や『情熱大陸』などのドキュメンタリー番組が大好きですが、あそこに出てくる人に挫折を感じていない人はひとりもいません。挫折を感じた時にどう捉えていくか、どう力に変えていくかというのは一番のチャンスだと思うんですよ。人って崖っぷちにいかない限りは本当の自分は見えないし、そこで取る態度がすべてだと思います。僕は自分のホームページで「崖っぷちありがとう」とかおちゃらけて言っていますが、ものすごく大事なことを伝えているつもりです。ただ説教のようにするのが嫌だから、笑いながらやっていますけどね。

ー松岡さんは高校時代から世界を舞台に活躍されていますが、パイオニアという立場から、世界で挑戦する起業家に向けてひと言お願いします。

松岡:世界に行きたいという言葉は格好良く聞こえますが、現実を捉えたときには相当な厳しさがあります。仮に向こうで商品を売るのであれば、文化が違う人たちに対してアピールしなければいけない。僕はテニスで世界に挑みましたが、テニスに文化は関係なく、コートの中で起きることは世界共通です。そういう意味ではビジネスはより過酷ですよね。海外に行きたいと言う方に「具体的に何がしたいの?」と聞くと、固まってしまう人が多い。そういう人は相当ラッキーじゃない限り成功しません。

ポイントとしては、それをどれだけやりたいかです。成功したいという想いがあれば、必ずやらなければいけないことが見えてきます。そこから自分の中でキッチリ計画を立てる。人は誰でも失敗のリスクを抱えていますが、計画をきちんと立てている人間は失敗したときに回復が早いんですよ。ここがダメだったら次はこういう形があるということがしっかり見える。気持ちや根性論、情熱というものだけで走っていたら、ものすごく弱いと思うんです。情熱というのはちゃんとした考え方があるからこそ。気持ちだけでは走れないと僕は思っています。

ー松岡さんご自身も綿密に計画を立てて動くタイプなんですか?

松岡:そうですね。僕はこれまでいろいろなチャレンジをしてきましたが、すべてに保険をかけてきたんですよ。慶應高校から柳川高校に転校したときは必ずインターハイで優勝して大学に推薦入学で慶應に戻ることが条件でしたし、渡米したときも必ずスカラーシップで大学に行くというのが両親との約束でした。プロになるときも2年やって成功しなかったら大学に戻るという約束をさせられた。僕は常に自分の中で「これがダメならこれ」というある意味保険をかけていたんですね。今も物事を成功させるために必要なことを紙に書き出して、それを基にすべての準備をしています。無謀なことは絶対にせず、7、8割確信を持ったら行動に移すタイプですね。