変化に強い企業が生き残る「企業進化論」 〜 ライフネット生命 出口 治明 会長 インタビュー

複雑な保険をわかりやすくシンプルに

長井:ネットで生保を売るというのは、従来の保険業界の常識にとらわれず、むしろ破っていかねばならなかったと思うのですが、苦労されたのはどのような点ですか?

出口:まず一つが「複雑でわかりづらい」生命保険をどうわかりやすくするか、という点ですね。先ほど申し上げた通り、対面販売の場合は、営業員がお客様に1から説明し、たくさんの中から最適な商品をお勧めすることができますが、インターネットでは中々そうはいかない。だから、初めて保険に入ろうという人でも、サイトを見ればすぐに理解できるよう、必要な保障に絞ったシンプルな商品だけを取り扱うことにしました。

長井:私もサイトを拝見しましたが、「わかりやすい」の一言につきますね。生命保険といえば特約がたくさんついていてややこしい、というイメージだったので驚きました。

出口:ありがとうございます。「わかりやすさ」も、「保険料半額」と同じく創立当初に固めたビジョンの一つです。

一番の課題は「信頼の獲得」

出口:「わかりやすさ」の他にも、苦労した点がもう一つあります。「お客様の信頼をどう得るか」ということ。これが実は一番大きな課題でした。何が難しかったのかといえば、生命保険は「長いから」です。証券だったら、ネットでワンクリックですぐに売り買い出来る。自動車保険もせいぜい1年です。

でも、生命保険となると、「終身」です。形のない超長期的なものを売るということは、企業の信頼度、ブランドの信頼度が必要なので、ものすごく難しいのです。だからネット生保は”コロンブスの卵”だったのです。

長井:ゼロから始めた会社で、しかもネットを使った販売方式でとなると、やはり安くても躊躇してしまうお客様はいらっしゃるのでしょうね。

出口:特に生命保険ですからね。でも「保険料半額」を実現するにはネット販売は欠かせない。ですから、設立したばかりの我々がどうすればお客様に信頼してもらえるかを模索し、しっかりした株主を選んだり、資本を厚くしたり、考えられる手はすべて打ちました。

でも、6年やってきてわかったのは、近道はないということです。「顔の見えるサービス」として自分たちで地道にPRしていき、お客様との信頼関係を直接築いていくしかない。そういうことに、ようやく気がついたのです。

長井:メディアに出演されたりSNSをよく活用されているのは、「信頼を築く」というのが大きな理由なのですね。

出口:はいそうです。その為に僕もパートナーの岩瀬もTwitterやFacebookやブログを使ったり、あるいは積極的に講演に行ってお話をさせて頂いたりしています。本もたくさん出版しています。ゼロからブランドを立ち上げて信頼してもらうためには、どんな会社かということを自ら発信していくしか方法がないのです。特に、ライフネットはインターネットで展開している会社です。だからこそ「顔の見えるコミュニケーション」を大切にしたい。そのツールとして、ソーシャルメディアは最適だと感じています。