ベンチャーキャピタリストは「起業家」のココを見る

ベンチャーキャピタルから出資を受ける3つのメリット

― 大きく成長するために資金が必要な場合、VCからの資金調達が向いているといえると思います。一方で、資金調達の方法は他に融資などの方法もあると思いますが、その中で「VCからの資金調達」を選ぶとよい理由とは何でしょうか?

竹川:VCから出資を受けると良い点は大きく3つあります。第一に交渉の過程で「良い“壁うち相手”になる」ということです。私たちベンチャーキャピタリストは、多くのベンチャー経営者の失敗や成功を目の当たりにしてきました。ですので、 起業家の方が問題に直面した時、これまでの経験を元に一緒に考える ことができます。これは出資後もそうですが、たとえ出資に至らなくても価値のあるフィードバックを得られるのではないかと思います。

第二に、諸条件をクリアすれば、 事業がスタートしていなくても資金を調達できる場合がある ということです。当社でもいまはある程度名の知られた有名なベンチャー企業が事業を開始する前に資金提供することを決定していた事例があります。以前ベンチャー企業の幹部として働いていた、もしくは大企業の新規事業を担当していた、など腕に覚えがある方や、また狙っているマーケットが明らかに大きく、かつ成長していきそうな事業を、明確な動機をもって取り組める方であれば、 スタート前からの出資も十分ありえます

第三に、これはベンチャーキャピタルの特徴によって異なる部分もありますが、 提供される資金の大きさ です。私たちサイバーエージェント・ベンチャーズでは 創業一年未満の会社であっても数千万円の出資を行っています 。もちろん私たちキャピタリストが成長を確信でき、ともに事業を作り上げていけると思える企業に限ってというお話ではありますが。

ベンチャーキャピタリストは起業家のココを評価する

― 具体的に出資を決めるにあたって、起業家の何を見ているのでしょうか?

竹川:私はベンチャーキャピタリスとして「 起業の動機が自分自身や身近な方の原体験に基づいているか 」「 ユーザーの視点でものごとをみることができているか 」の2点をみています。良い起業家は、これらの点で他の起業家とは異なっているように思います。

― 起業の動機が原体験に基づいているとはどういうことなのでしょうか?

竹川:「起業の動機」は、意志の源泉がどこにあるかです。ベンチャー企業の経営は大小さまざまな失敗の連続で、ときには本当に投げ出したくなるほど苦しいものです。そのときに大事になるのが「なぜこの事業をやっているのか」という動機です。 原体験に基づいた動機をもっている人は強いですが、単に「目先で儲かるから」というだけの動機で始めた人はいざというときに事業を投げ出してしまう可能性が高い と感じています。

例えば、ある起業家の話です。彼は実家が洋服屋さんで、もともとアパレル分野で起業をしたいと考えていました。ある日、日本で売られている洋服はタグを見るとほとんどが「Made in China」である一方で、海外の有名ブランドの製品をつくっている日本の職人さんがいることを知って疑問に思ったそうです。

海外の有名ブランドも、もとは工場だったものが大きくなった結果。でも日本にも優秀な職人さんもいる。条件は同じなのに、なぜ世界的に有名なアパレルブランドが日本から出てこないのだろう? と。

そこで “日本初、世界に誇れる「Made in Japan」のブランドをつくろう”と決意したそうです。その後は自分の足で日本各地の職人さんをさがし、月に数十もの工場をまわって有力な提携先の発掘をしています。彼のような原体験や強い動機があり、そのために泥臭く行動できることが、優れた起業家の資質のひとつだと思います。

― ユーザー視点の考え方というは一般的にもよく言われるポイントですね。

竹川:「ユーザーの視点でものごとをみることができているか」というのは、言い換えれば、 起業家自身がユーザーの視点に立って、そのサービスやプロダクトを「本当にお金を払ってまで買うのかどうか」をとことん考えているか ということです。これは意外なほどにできていないと思っています。

この対極にあるのが供給者目線であり、机上でのみものごとを考えることです。市場規模を調査会社などの算出した数値を提示して「この伸びていく市場で、3年後までに20パーセントのシェアをとります」という起業家の方もいます。しかしそれは「その会社にとって本当の市場か」どうかはわかりません。
“市場”とは、そのサービスが解決する課題や満たしてくれるニーズに、きちんとお金を払ってくれるユーザーがどれくらい存在するかということです。ユーザー目線で積み上げる形でビジネスの規模を捉えられるかが肝だと思います。

これは「B to B」でも「B to C」でも同じでしょう。ユーザーになりきれない場合は、ユーザーになりうる人に話を聞いてみるとよいです。観察することも大事です。いずれにせよ、自分をユーザーと同じシチュエーションにおき「自分だったら本当に買うかな?」と想像することは最低限必要です。