


仏教といえば中国やインドなどが有名だが、インドネシアのジャワ島にも世界最大級の仏教遺跡がある。世界遺産に登録されている「ボロブドゥール遺跡」だ。8世紀に建造されたといわれている壮麗な遺跡へと向かった。
インドネシアといえば圧倒的に有名な観光地がバリ島である。島ののどかな雰囲気と独特の文化的な魅力に惹かれ、何度も訪れる日本人観光客も多い。私もバリ島に惹かれてインドネシアをはじめて訪れたのだが、ガイドブックをぺらぺらとめくっていると、お隣のジャワ本島にはものすごい仏教遺跡があるではないか。リゾートだけでは物足りなかった私は、バリ島の後、ジャワ島へも立ち寄ることにした。
バリ島から飛行機でジャワ島の古都と呼ばれるジョグジャカルタへ。古都というイメージには程遠く、町中はショッピングセンターや店が立ち並び、車やバイクであふれかえる都会だった。こんなところにそんな仏教遺跡があるのだろうかと不思議に思いながら、ここからバスに乗り、40kmほど離れたボロブドゥール遺跡へと向かう。
町を離れ、何もない、ただひたすら緑が続くヤシ樹海へと分け入っていく。バスから降りると、まるで要塞のような建造物が待ち構えている。あれが、ボロブドゥール遺跡だ。高さ42m、基壇の一辺が124m。約100万個の岩を積み重ね、下部の方形が6層、さらに上部の方形が3層からなる巨大遺跡だ。

ただ驚くべきは、その巨大さよりも精巧さだ。これだけ巨大な遺跡にもかかわらず、細部の造りが実に見事なのだ。迷路のような回廊には仏教絵図が描かれたレリーフが2500面以上あり、その1つ1つが芸術品のような美しさ。上部方形には、つり鐘型のストゥーパ(仏塔)が規則正しく72基、立ち並び、最上部に大ストゥーパがそびえたっている。
ただでかいだけではない。ただ岩を積み上げただけではない。何らかの宗教的な意図を持ち、巧みな芸術的技巧が施されたこの遺跡は、単なる権力欲を見せつけるだけではなく、何らかの宇宙の真理や自然の摂理を指し示しているような、そんな印象を受ける。世界遺産に巨大遺跡は数あれど、未来の世代に何かを語りかけるような、そんな遺跡の1つだ。小ストゥーパの傍らに腰を下ろすと、一面の樹海が目の前に広がり、また新たな感慨が湧き上がってくる。
8世紀頃に建造された後、1000年以上も密林の中で火山灰をかぶって隠れていたという。未だこの遺跡が何のための建造物かはよくわかっていない。はるか昔の世代が、未来の私たちに何を語りかけているのか。遺跡にたたずみ、じっとその空間に身をおいているだけでも、ここまで来てよかったなと思えた。
(文・写真 / 笠原崇寛)